秒速5センチメートル




秒速5センチメートル<試し読みはこちら>

原作  新海 誠 漫画 清家 雪子 「秒速5センチメートル」のレビューです。


明里:ねぇ、秒速5センチなんだって。
貴樹 :えっ、なに?
明里:桜の花の落ちるスピード。秒速5センチメートル。
貴樹 :ん〜。明里、そういうことよく知ってるよね。
明里:ねぇ、なんだか、まるで雪みたいじゃない?
貴樹 :そうかなぁ? ね〜、待ってよ! 明里!
明里:隆貴くん、来年も一緒に桜、見れるといいね。

映画 秒速5センチメートル「桜花抄」より

映画でおなじみ今作品。コミックの追加エピソード

映画・小説・コミックと様々な作品となっているこの作品。人気の程が伺えますね。
今までも散々語られている作品ですがレビューしたいと思います。

私はこの作品、途中まで 貴樹 はとらわれの囚人なのですが、最後の最後で救われる幸せな話だと思っています。この秒速5センチメートルのコミック版のレビューはそれを踏まえた上で読んで頂けるとありがたいです。
「ひねくれ者の秒速5センチメートル」を踏まえた上で観覧ください。

コミック版は各々の心情が細かく描かれています。
一番オススメなシーンは2巻の「何も」「いうな」このシーンですね。

映画では言葉で表現されていないこのシーン。
コミックならではの繊細な説明です。
このセリフですが、実際は言葉として音になり発せられた訳ではありません。
では、誰が言ったのか、誰が感じたのかについて考えたいと思います。

花苗は 貴樹 の事が好きで、告白しようと考えていました。
ただ、自分に自信がなく願掛けで波に乗れたら言おうと思っていた。
そして、いよいよ告白しようという時 のシーンです。

これ、 花苗 が勝手に感じとったのかもしれないし
貴樹 は自分の 心の壁 を破って、それでも自分に向かってくるか試しているのかもしれないし、何も言わないでくれたら今の関係を続けられる。だから言うなという優しさかもしれないし、難しいですよね。それが優しいかどうかは別として。

この段階でそれでも向き合ってくれる人がいたなら、その後の 貴樹 の人生は変わってたかもしれない。(コミックのなかで貴樹が何人かの女性と付き合っても結局選ばれない自分という表現が出てきます。)

恋愛って、一方的な思いを相手に押し付け合う行為なんだと思うんですよ。
なぜ告白したりする必要があるのか。
相手に想ってもらいたいとか相手の特別な存在になりたいとか、
それらを含め本人のエゴなんじゃないかな?

貴樹 は純粋な思いでいた(エゴのぶつけ合いをする前)に自分ではどうする事も出来ない「圧倒的な力」によって分かれる事になってしまった、明里を想っている。
恋愛とはまた別の領域の感情なんだと思うけど、それをその後の恋愛と同一視する事で 貴樹 を苦しめていく・・・。

結局は他人の事なんてわかる訳ないんだから、人と深く付き合うなんてエゴでしかないよね!
傷つきたくないならぶつかっていくしかないよね!

で、コミックでは大人になっておつきあいした理紗の話が掘り下げられていきます。 映画では軽くふれただけでしたね。

分かろうとする事が相手を苦しめる

貴樹 も大人になりこのままじゃいかん。と思ったりするんですよね。
んで理紗と向き合おうと付き合う。でもうまくいかない。

理紗は関係がダメになりそうな貴樹 に「 貴樹くんの気持ちが全然わからないのお願いあなたの心を見せて」
とかか言う。

おいお~い。
あなたのすべてを受け止めてあげる・・・。
かのように見せかけた光明な罠だと思うんですよこれは。
懺悔させてさ、それを許して味方になって自分の支配下に置こうとする行為じゃない?大丈夫??

自分はこう言う分かった顔をして近づいてくる人が苦手です。
困難に向かった時、逃るの姿勢の貴樹と傷ついても向き合おうとした結果出た答えなんでしょうけど、マンガを読み進めていくと
悩んでいる人間に、3年間ずっと「私は正しいことを言ってますよね」みたいな態度の人間とお付き合いしてたら苦したっただろうな。と。
そりゃうまくいかんよね。

結局は「ごめんね」と謝罪する事で自分を許す。

ならはじめからやんなー。

謝る事ってさ、相手に罪悪感を与えるじゃない?
泣きながら電話の留守電入れてに謝罪してごめんねとかされたら、
トラウマの解消をしてたはずが、逆にトラウマになるわ!ほんとに。

でも、純粋な貴樹は 「理紗すまんかった・・・。」ってなるわけ。

理紗「けいかくどうり。ニヤッ」

そして、コミックでは最後に更に呪いをかけて分かれます。
理紗 「幸せを願う事はできても幸せにはしてあげれない。」
おいおいおいお~い、貴樹が幸せにしてくれって言った~?
幸せってのは誰かにしてもらうもんじゃなくて自分でなるもんやぞ!くそが。

まぁ、お約束通り綺麗なセリフ吐いてお別れするんですよね。最後までそれか。


それでも自分の感情を口にする事で貴樹も少し楽になります。
理紗も、必要悪ってところですかね。

そして、コミックは映画版のOne more time,One more chanseに向かいます。


(コミックとは関係ありませんが・・・。私はこの映画を観た中で、ロケットが打ち上げられるシーンと、この One more time,One more chanse が流れて進むエンディングがとても好きです。もう、これ流す為に今までの全てが前座だったのかと。あんなに良くできたストーリーや映像全てが!しかも最大に盛り上がる最終章でセリフなし。説明とかいらん。あとは感じろ。どう感じようが好きにしろって、天才か。新海誠てんさいかよ。と)

明里 はどうしてようと、どうでもいい。

このストーリーで 明里 という人物は重要ではありますが、実際はあまり関係ないんだと思います。女は切り替えが早いとか、明里は思い出にしてるとか、よく言われていますが、、、主人公である貴樹に与える影響はほとんどありません。

ただ、最後に 明里が関係する事で貴樹が救われるシーンがあります。

偶然すれ違うシーン

まぁ、現実ではこんな偶然なかなか起きないですけどね。お互いに気が付いてたんでしょう。 シーン。電車が通りすぎた後、明里が居なかった。最後の最後でこれが起きた事で全て救われた。
微笑んで歩き出す貴樹。
自分の気持ち次第救うか救われるかなんて自分が決める事だから。

実際、ある朝天気が良かった、それだけで救われる事もあるんだよね。
貴樹 、しあわせになるだよ・・・。

だが、コミックはココで終わらない。

花苗もまた、貴樹の思いを引きずってます。そこで告白を受ける訳ですがどうしようかモヤモヤ悩んでいく話が追加されます。

花苗のストーリー

自分を縛るものなんて自分以外ない。自由になるには自分がつらい思いをしなければならない事もある、それが怖くて自分を縛る事もある。そんな事を言われて自分の気持ちを確かめに東京に行く花苗。

新たな呪いのはじまり・・・。かもしれないかどうかはコミックを是非手に取って確かめてください

そうか、分かった。うじうじ過去の恋愛で悩んでる人を見るのが鬱アニメと言われる所以か。

今更、語りつくされた感もありますが秒速5センチメートルのレビューでした。

映画はnetfrixで観る事ができますよ。